♡
光の王 ロジャー・ゼラズニイ
「呼吸というのは、神々の贈り物のうちでも、
もっとも感謝のされかたがすくない。
王者も乞食も、勝利者も負け犬も、
ひとしくそれを吸っていながら、
そのよき空気に感謝を捧げ、
それをほめたたえるものはだれもおらん。
~~
夜の翼
月のない空には銀河が白く流れていた。
☆
☆
☆🌕🌜🌛
そして真実の月と二つの偽(いつわり)の月の、移りゆく光を浴びて、
両腕をふりあげ、指をねじ曲げ、仮想の敵に何度も爪をたてるのを私は見た。
*
*
アヴルエラが優しく言った。
「あたしたちは、第二の青春を〈聖霊〉の寛大で慈悲深いみ心を通して得るのであって、
個人の善行からではありません」
☆
○
この娘にはだれか愛する者が必要だったのかもしれない。
なぜなら、愛するとは受け取ることの極致である。
返礼なしに愛されたことのある人なら、誰でもこれを証明できるだろう。
愛される人は、与えに与えなければならない。
そしてバーバラは愛する人を見出したが、
それはそぞろ歩きのときではなくて、市場へ行ったときだった。
~~
背教者ユリアヌス
☆p15上
*
それはバシリナの眼が、青灰色のすきとおった感じの眼で、
見開いていても、どこを見ているか、よくわからないような、
ある種の謎めいた、空虚な感じを与えたからである。
*
良人のユリウス・コンスタンティウスはバシリナのこの風変わりな、
謎めいた眼に強くひかれていて、コーサカスの山脈の色とか、
ガリアの狼の歪んだ眼とか、戯れに呼んでいたが、
たしかに彼女のほっそりとしたやさしい顔立ちのなかで、
この眼だけが、際立った印象を与えたのは事実だったのである。
*